中国が進めているスマートシティの国際標準化活動などについて、スマートシティーの国際規格 政府、中国提案に危機感 なんて記事が日経に出てる。
実は、最近この話が霞ヶ関でかなり騒がれていて、いろいろな動きが活発になりつつある。しかし、この記事にしても、あまりに表層的すぎて、なにを今更というのとなにを騒いでんの感がある。
もう少し中身を理解して、その影響を精査し、日本としての行動を決めればいいのだが、たくさん出てきたから大変、中国だから反対しなきゃなんていうのは、たぶんなんの成果も期待できない。
標準化活動における中国の官民での取り組みというのは、ここ数年本当に活発で、かつ戦略的だ。ITU/ISOなどの国・地域単位を中心とする活動と、IEEE/IETF/W3C/3GPPなどの民間を中心とする活動の両方に、全方位的に提案を出してくるし、そのなかでリーダーシップポジションも得ている。そして、国内にシャドウコミッティのようなバーチャルSDOを作って、しっかりと戦術を練っていると感じる。
ちょうど、僕が議長になったIEEE P3800 Standard for a data-trading system: overview, terminology and reference model は、CTS:Consumer Technology Society (公開情報では、Consumer Electronics Society)の配下で、DFESC: Digital Finance & Economy Standard Committee という 標準化委員会のなかのWGとして設置された。
このCTSでも、今現在でも80を超える標準化プロジェクトが進行していて、そのほとんどのチェアは、アジア系の名前だったりする。でも、数は多いけどその実態は多くがEntity Methodによる標準化で、これは法人や機関が最低三つあれば標準開発ができるわけだ。
中国では、かつて無線LANの独自規格WAPIをつくり、輸入障壁としようとして失敗した経緯がある。その後、彼らは自分たちのアイデアをIEEEの場に持ち込んで、標準化活動をする方向になった。例えば、802.11ajは、中国向けに11adを拡張した規格なのだが、この周波数は中国でしか使えない。にもかかわらず、彼ら802.11での正式なプロセスでタスクグループを組成し、802.11のルールに基づいて標準化活動を行った。同様のことは、かつて802.11jという日本向け拡張もあったけど、このようなことをしっかりと組織だって、いまの日本ができるかというと疑問だ。
実際に、あいも変わらずデジュールとフォーラムなんていう言い方をし、関係者が総合的に両睨みをしていない。このことを僕は毎年のように某関係省庁で訴えてきて、幸いに理解をえて両睨みの戦略をデータ流通に関しては進めている。
いわゆる民間規格は、民間でなんて言ってる人は、自分の生活のなかにどれだけ民間ベースの標準があふれているかを確認してみるべきだ。しかも、それらは最終的にISOで批准されているのだ。
中身を知らずに、表層的な数だけで騒ぐのは、まるで連日発表されているPCR検査の陽性者数のようだわ。