今日の午後は、某社主催のワイヤレス技術セミナーでIEEE802.11の話。今回は、2セッションを受け持って、一つはIEEE802.11全体のお話、もう一つはIEEE802.11aiの詳細。
全体のお話では、IEEE-SAにおける標準化の進め方等も解説したのだが、時間の制約であまり詳しくは突っ込めなかった。
ところで、築地の移転問題やオリンピックのエンプレムやら、とにかく日本では、「誰が、いつ、どこでこれ決めたんだよ、責任者出てこいよ」といっても、結局のところ特定できませんでした問題が散見される。
たまたま、僕がチェアしているIEEE802.11aiでは、ある組織に属している投票権者らが、支配的な投票行為を行ったという疑いがあり、標準化を取り仕切るSA(Standard Association)による調査が行われ、その報告が上がってきた。
IEEE802.11は、Individualといって、投票権を持つ各個人が一個のエキスパートとして、自らの専門的知見に基づき、投票権を行使することになっている。つまりは、誰かに投票を指図されたり、指図したりすることは禁じられている。とはいえ、まぁそれぞれは会社に属しているので、その会社の方針に沿って投票するのだが、これはその決議する内容を理解し、そこまでの議論に参加していることが前提だ。
しかし、実際にはIEEE802.11では、パラレルでいくつものタスクグループが会議をするので、当然ながら自分がメインとして参加していないタスクグループも多々あることになる。そこで、各タスクグループで、意思決定をする時だけ、組織として投票権者に召集かけて、自らの組織に優位な採決をもぎ取る行為が発生するわけだ。
今回は、こういう行為が実際に行われたかを、関係者からのヒアリングなどにより調査した結果が報告されたのだが、まぁ他人に特定の投票を支持するような行為の有無については、証拠を得るには至らなかったという報告となった。
それでも、報告書にはそのような問題となった時の動議と採決結果が明確に記載されている。こういう問題が指摘されてから、チェアとしては、疑義のありそうな投票についてRecording Voteという方式として、誰がどのような投票(賛成、反対、棄権)をしたかの記録を議事録に残した。この結果、特定の組織がどれだけ突出しているかが垣間見得る。そして、参考までにIndividualではなく、各所属組織あたり一票という数え方をしたら、結果がどう変わるかなども明確に報告された。
このように、過去の議論や採決をさかのぼって調べた時に、きちんと事実が把握できる点は、やはり議事運営規則と意思決定の仕方が明確なことの証左だろう。
もし、築地の移転問題なども、会議体がきちんと意思決定権を持ち、その意思決定方式と議事運営が明確になっていたら、いつ決まったかわからないなんてことは、限りなく減るのではないだろうか。
とにかく、お役所の有識者会議とかは、その会議体にどういう権限があり、会議体としての意思決定がどう行われるかなどが、不明というか存在しないのが、いつも不思議でしょうがない。
会議体として、諮問機関というオブサーバー的なものだとしても、そこが放つ報告書や答申は、会議体として採択決定されるものであり、その採択には明確な評決行為をすれば良いと思うのだが、そのような意思決定は聞かない。
めんどくさいことを発言すると、まぁそこは座長一任で...とか、あとは事務局でとかやってるのって、結局のところ保身的で無責任な集団行為でしかない。
そろそろ、日本のお役所の会議も、委員の選任も指名ではなくて、選挙にして、意思決定も採決をとるようにすれば、国際競争力もつくんじゃないかと思うんだけどなぁ....