憲法改正についての議論のなかで、まずは96条に示されている国民投票への発議要件である「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」を「二分の一以上の賛成」に修正するという意見があるようだ。
確かに、多数決という意味で、過半数というのは、判りやすいけど、憲法というものの重要さを考えたら、特別多数であることが適切なのではないだろうか?
先般の首相の国会答弁でもあったけど、三分の一の反対があれば、多数の人が望む事が簡単に否決されてしまうという言い方は、かなり詭弁だろう。だいたい、単純過半数をもってして、多数の意見というのは、ちょっと理解しかねる。
もし、これを過半数とすると、例えば少数差(一票)で過半数を得て改正発議をしたとして、後の時期に改正内容に反対する改正案が再び提案されたら、その少数差の表が反意したら再び改正ができてしまうことになる。 これに対して、特別多数の三分の二以上であれば、少なくともその時点から六分の一の票数を反意させる必要があるわけだ。つまり持続性という意味からも、重要な決議に、単純過半数ではなくて、特別多数を用いるのは、その評決の及ぼす重要性に鑑みて、適切な重み付けではないだろうか?
規模というかまったく事の大きさは違うけど、僕が参加しているIEEE802.11の会議では、議事進行等のプロセスに対しては過半数だが、技術的な標準については四分の三の特別多数を用いているので、もっとハードルが高い。それでも、僕らは意見を調整したり説得したりしながら、物事が可決されるように努力をしている。
一国の国体を変えるかもしれない憲法という最重要な基本法の改正に対して、意見の異なる者を説得する努力もせずに、改正要件の緩和を思いつくというのは、まったく情けないと言うか呆れてしまう。
もし、改正すべき内容が、十分に民意を得るものならば、まずは三分の二以上の賛成を得るために邁進するべきだろう。
僕は、別に今の憲法を改正することに単純に反対ではないけど、その手順として96条の要件緩和というのは、僕には理解しかねる。