♪ぼくらは位置について 横一列でスタートをきった....♬
P乗用馬19歳、競走馬からこの世界に飛び込んだ。同じように人を乗せる仕事でも、瞬発力と短期勝負の競走馬と数時間も走り続けるエンデュランスの世界は、まったく求められるものが違う。最初は戸惑ったこともあった、走り出したい衝動は、本能として、馬なら誰にでもある。それをこらえて、長丁場のレースを、怪我をせずに完走することの難しさに立ち向かってきた。
この日、やってきたのはMだ。Mとは、ここ数年一緒に60kmまでのレースをこなしてきた。最初は、その乗り方、手綱捌きに辟易させられた。考えてることが読めない....いたずらな体重移動に押さえつけられ、半ば無理やりというハミの当たりに反発し、綱引き状態に陥ることばかりだった。所詮、どんなに頑張っても、力勝負になったら人間なんて、小さいものなのに、それが判っていない。ちょっとした不注意のせいで、夏前に一度振り落としたことがある。幸い自分は大事には至らなかったが、Mにはそこそこに厳しい仕打ちだったかもしれない。
でも、Pは妥協しない。お互いの信頼関係は、相手に対するきめ細かな気配りがあってこそ成り立つものだ。あの怪我で、少しでもそんなことを判ってほしかった。
そんなMとの関係が、最近は少しずつ変わってきた気がする。今日も、いつもの林道を12kmほどMと走った。気温が低い時期とはいえ、高低差350m、距離12kmをひたすら速歩で走り抜けるのは、それなりに疲れる。それでも、Pは妥協はしない。確実に、決して気を抜くことなく走り続けた。今日も、鞍上のMの息遣いを感じ、下手くそな手綱捌きながらも、適度に譲る姿勢を感じ取りながら走った。
あの振り落としたのが効いたのかというと、どうもそうではなさそうだ。去年の夏くらいからMに若い娘の影が見え隠れする。時には、そんな娘の残り香がゼッケンに染み込んでいる。こいつ、他所で遊んでやがると思うと、あまり気分のいいものではないのが普通だ。でも、乗用馬としてのPのプロ意識が決してそんなことは態度に出さない。
久しぶりの林道の裏道コースも、安定した走りでこなし、決してバタつかない。これが、Pの仕事の流儀、
♬あと一歩だけ、前に進もう♬
ということで、午前中はPooと林道を12km。午後はAliceと馬場で40分。今日は風はあるけど、気温は高かったので、いつもの場所をチェックしたら、蕗の薹が出ていたので、さっそく摘んで、アンチョビとカラスミと蕗の薹のパスタを夕食に。たまたま、昨日芽キャベツを買っていて、当初は芽キャベツのパスタの予定だったけど、蕗の薹が入ったので、芽キャベツはパンチェッタや冬野菜と合わせてスープに。