とあるネットでのLTEの比較という記事で、LTEとWi-MAXについて、「同じような条件下で、理論上はLTEのほうが速い」と書いてあった。
最近のつながり易さ比較のような、使ってみたらこうだったという記事ならば、そこにはいろいろな誤差が含まれるので、なんのことはないのだが、こういう技術解説記事で、原理原則をはき違えた記事をみると、日本の無線技術に対する層の薄さを感じてしまう。
"同じような条件下で、理論上"というのは、チャンネル間干渉だとか、ガードタイムの精度とかいう細かい話は置いといて、原理原則に乗っ取ってという意味だろう。(理論上とまで書いてあるし)
元の記事では、FDD vs TDDな比較として書いてあるので、これはそのまま、理論上はFDDのほうがTDDより早いということになる。
通信の原理原則でいけば、通信速度は、帯域幅とS/Nで決まるわけで、同じ帯域幅に対する効率としては、FDDではガードバンド、TDDではガードタイムが大きな影響を与える。しかし、これは理論上は、どちらも決定的な差異はない。つまり、"同じような条件下で、理論上"なら、TDDもFDDも差はないというのが、原理原則だ。
どうも、某経済新聞がたまに一面トップで掲げる技術系記事とかもそうだけど、メディアの技術記事では、こういう超基礎的な原理原則をまったく理解していないのが多い。
エネルギー保存則とか重力とか、シャノン則とかは、「標高が高くなると気圧が低くなる」とか「水より比重が重いものは沈む」みたいなもんで、最低限の常識として理解をしていてほしい。
物事を理解したり解説したりするのが上手な人というのは、物事における個々の事象固有の部分と、原理原則として普遍的な部分の区別がしっかり出来る。
これが出来ない表層的な人の記事は、永久機関が出来ちゃったり、同じ重量なのに落下速度が違っちゃたりする、スーパーイノベーションになっちゃうことが多い。
まあ、読み物としては、それはそれで楽しんだけど、こういうのが一人歩きすると、それを鵜呑みにする困ったちゃんが増えて、その修正をするという社会的非効率が生まれる。 ある意味技術に関する風評被害なわけで、こういうのは本当なんとかならんのかな...といつも思う。