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2014-07-25 Maker's のExit

_ [仕事] Maker's のExit

  昨日までの出張で、シリコンバレーの最近のスタートアップに関する話しも沢山見たり、聞いたりする機会があった。いまは、とにかくメーカーズといわれるハードウェアのものつくり系がブームだ。

  たった一つのモデルの製品を開発して、販売した会社があっという間にとんでもない額で買収されるという、まさに夢のような成功事例が沢山生まれているようだ。

  たしかに、いまは3Dプリンタなどの試作環境やモジュール化された要素部品類、ソフトウェアスタック等により、従来は沢山のリソースを必要とした開発試作が、あっという間に、高いクォリティで実現できてしまう。

  でっ、こういう開発試作をして話題になったスタートアップを、グーグルなんかが、半端ない金額でM&Aする。M&Aされた側は、その時の条件縛りのもとで、そのグループの傘下で数年働くことになる。最近は、巨大な金額で買収された会社が、さらにまたスタートアップを買収するなんていうことも起きている。

  買収する側からすれば、アイデアや開発リソース、開発時間を、お金で解決しているわけだ。これは、自らの戦略的なポートフォリオの充実を実現し、元々にもつ自社のサービスやプラットホームとの直接、間接を含めた総合的なROIが充分に成り立つのだろう。

  では、バイアウトした方はどうなのかというと、巨額の資金を手に入れても、おそらく数年は買収した企業のコントロール下になる。そして、まぁ晴れて喪が空けたら、その資金を元にまたスタートアップをしたり、エンジェルとしてスタートアップわ応援したりするのだろう。

  つまり、グーグル等のビッグブラザーは、その帝国の拡張をつづけ、そこに買収された側は、決して自らは帝国にならない。そのかわり、もの凄く早いサイクルで、成長、バイアウトの循環が繰り返されるので、そこに関係するVCなどの金融系にとっても、魅力的な経済がそこにあるわけだ。

  僕の年で起業するとなると、何がいけないかというと、こういう短期決戦的な絵が描けない点だろう。つまるところ、どうしょうもなくコンサパなのだ。僕は、自らのブラドを持つメーカーという立場が多かったので、どうしてもメーカーとしてのプリミティブなモデルが頭から離れない。それは、もしハードウェアのモノツクリをするのなら、それを販売する事で対価を得るというモデルだ。

  ハードウェアメーカーになるということは、ソニーやトヨタやアップルになるというイメージなのだ。もちろん、アップルに代表されるように、ハードウェアだけでなく、それを使ったサービスの創出をし、プラットホームやコンテンツでも収益を得ることが重要で、ハードだけでは生き残れない。

  このモデルでは、ハードウェアというのは、一つだけではなく、常に新製品が投入し続ける事が、もの凄く重要な鍵だと思っている。どんなハードウェア製品も、かならず飽きがくるし、ベルカーブ的なライフサイクルがある。だから、メーカーは常に開発投資を継続して、新製品や新バージョン、新サービスを提供し続けていかないと生き残れないだろう。こういう取り組みを、継続的にしていく為には、半端ない投資とリソースが必要で、それをM&Aにより実現してるのが買収側のビッグブラザ達なわけだ。

  逆に、買収される側のスタートアップは、こういう長期的な事はあまり考えず、 バイアウト自体が目的となっているケースも多そうだ。もちろん、とにもかくにも、巨額な資金をバイアウトで得られれば、また新しい事、好きな事にチャレンジ出来るという考えもある。こういう考えをするファウンダーにとっては、バイアウトは、決してゴールではなく、途中過程のマイルストーンに過ぎないわけで、それはもの凄く魅力的だし素敵だ。

  これは、バイアウトというEXIT形態の話しだけど、実はIPOも同じだろう。IPOは、決してゴールではなくて、成長の過程の1マイルストーンだろう。IPOによって得る大きなメリットは、直接金融からの資金調達が可能となることだ。だから、IPOした企業は、そこで得た資金で次に何をし、どう成長して行くかが,常に市場から問われる訳だ。

  さて、振り返ってみて、日本の新興市場において、過去に何度かあったベンチャーブームでIPOに成功した企業のうち、どのくらいが上場後に市場からの資金調達に成功しただろうか?新株だけでなく社債を含めても、残念ながらかなり少ない。新興市場から東証の一部などにくら替えした企業を除いて、新興市場に留まる企業の多くは、残念ながらIPOがピークで、その後が続いていない。また、残念な事に上場廃止となったベンチャーも沢山ある。

  つまるところ、M&AもIPOもExitの形態であるけど、それはVCなどにとっては、まさにExitで手離れの形だけど、ファウンダーにとっては、長期的な成長の中のステップでしかないんだという事だ。ところが、どうもベンチャー創出とかスタートアップ支援とかいって、シリコンバレーのまねごとをしたがる人達やそれに載せられる人達は、M&AやIPOをゴールとして捉えてる人が多いように見える。

  日本からスティーブジョブスをとか言うけど、日本にだってソフトバンクの孫さんや、ユニクロの柳井さんのように、世界レベルで活躍しているアントレブレナーは居る。ほんとうにそういうレベルの起業家の成長を支援するならば、この辺りの長期的な視点が欠かせないのではないだろうか?

  ゴールとマイルストーンを勘違いして、今目の前に見えるムーブメントやシンボリックな取り組み(フォボラボとかね)だけを、取り入れても決してグーグルやアマゾンが日本からは生まれないのではないだろうか?

  まして、地方都市とかでも、我が地方からベンチャー創出をとかで、こいうパターンに投資していると、それは巨大投資で都市部や国際都市を追いかけて華々しく開店した巨大ショッピングモールが、数年後に巨大廃墟になるパターンと同じかもしれない。


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