Internet of Thingsということで、Google がNestを買収したり、今はものつくりのムーブメントを感じる。
ファブラボやキックスターター、インキュベーションセンターなども、こういう方向性を後押ししている。ものつくりの好きな僕にとって、このムーブメントは、とても嬉しくて、ワクワクさせられる。
一方で、とてもユニークで面白い企画を持つスタートアップが、ものつくりを軽く見すぎて、粗製濫造により痛い目にあうんじゃないかと、老婆心が起こる事例も沢山目にする。
いまのものつくりでは、圧倒的にソフトウェアによる機能実現が、製品の企画力や特徴を生み出している。また、EMSなどによりハードウェアの製造は、専門企業によってまかなわれている。
このため、設計されたものを、一定の品質で大量に製造すること事態は、プロによって達成される。ところが、EMSなどに発注する開発元にものつくりの経験が乏しいと、設計において利用環境、経年変化などによる信頼性変化等に対する品質保証的な思考が欠如する。
ものつくりは、ブランドメーカーとして、お客様に製品を提供する以上、製品品質にたいする社会的責務は、その製品が利用される限り継続して存在する。
そこそこの民生機器などをメーカーで設計、開発した経験者であれば、皆それになりに市場クレームや回収などの厳しい経験をしているだろう。
アニーリング試験などは、射出成形品に限らず回路などにも必要で、そういうことをして、自分の設計を評価することを、ハード屋はかならずやる。
ソフトウェアの場合は、動作の再現性が高いから、こういう行程を定常的に行わないこともある。
最近のものつくりムーブメントにある、ガジェットのようなものは、組み込み系の小さなシステムが多く、昔ならハードウェア屋が主担当だった領域で、ハードウェア屋が自らマイコンのファームを書いたりしていた。この時代は、マスクを起こしていたので、市場出荷後にバグがあったら、回収するしかなかったので、製品のリリースに対する緊張感はとても高かった。
ところが、いまはガジェット系もファームは、いくらでも書き換えることができるから、自ずとリリース前に製品をいじめ抜くことが減っている気がする。
こういう風潮が、ソフトだけならいいんだけど、ハードそのものも、信頼性試験などがないがしろにされているように感じるわけだ。
ものつくりは、製造原価率が高いから、ひとたび市場で火を噴いて回収などの憂き目にあったら、利益が消えるどころか、スタートアップなんかは、会社そのものの存在が簡単に脅かされる。
というわけで、ものつくりする人は、単に動くものを作るんじゃなくて、その信頼性なども、ぜひ意識してほしいと思うのは、年寄りだからだろうか?