IEEE802.11が標準化されてから二十数年が経過し、当初の予想を遥かに超えて無線LANは拡大成長してきた。当初は、赤外線なども含まれていたし、2Mbpsから始まった伝送レートも、いまや規格の上では6.9Gbpsで、実際の製品としても数百Mbpsが条件によっては出てる。(どこぞの新聞報道だと、もっと早いけど....)
そんな無線LANにとって、2014年〜2015年は、大きなターニングポイントになるかもしれないトピックスが、先週のIEEE802.11 Interimでもでてきた。
一つ目は、Qualcommが提唱しているLTE-Advanced in unlicensed spectrumだ。これは、従来のように携帯電話にWi-Fiを載せて、オフロードしようというのではない。キャリアの基地局でコントロールしながら、LTE-Aのフレームを、Unlicensed バンドで送受信するというものだ。
周波数資源が不足しているので、今後は電波の共用利用がとても鍵になるのだが、このアイデアは、同じ帯域をLTE-AとWi-Fiで共用することになる。共用というと、聞こえがいいけど、早い話が同じバンドで帯域の取り合いになるわけだ。
無線通信には、利用者各々が自立して、自分の無線装置で独自に運用する自営通信と、通信事業者が設備を構築して、通信サービスとして提供する事業者通信の形態がある。
自営通信には、工事現場や大きな施設などで使われているトランシーバーや、警察無線、消防無線など、さまざまなものがあり、無線LANもその一つだ。特に無線LANの場合には、従事者免許といって操作する人に免許が不要な点や、医療、工業、科学用の様々な方式で自由に使える周波数を共用していることが特徴だ。
様々な方式と共用というのは、逆に言えば品質の保証が出来ないわけで、所謂ベストエフォートなわけでもある。
これに対し、携帯に代表される事業者通信というのは、あくまで通信事業者が設備投資をして、運用し、通信そのものをサービスとして提供する。従って、提供側が対価に見合ったサービス品質を保証する。
有線通信網の世界では、End-to-End 自律分散というボリシーのインターネットと集中制御、支配の電話網に対比すると解りやすい。
そして、今年なにがはじまるかというと、無線LANが使ってたベストエフォートな電波も、集中制御網である通信事業者が主体で使うという議論だ。
まぁ、僕としては、インターネットで数年前に起きたNGN議論のデジャブな気がするけど、とにかく無線LANを支配したいという騒ぎ大きくなるということだ。
自由気ままに生きたて来た無線LAN娘が、大企業に嫁入りさせられるかどうかは、なかなか興味深い。
二つ目は、IEEE802.11でも、Wi-Fi Allianceでも、本格的に11bをなるべく使わないようにする取り組みが始まることだ。無線LANは、過去の規格との互換性を大事にしてきたので、いまでも11bの11Mbpsモードが必須となっている。このため、せっかく11g/n/acなどの高速な送信レートで通信できても、混在環境などではトータルパフォーマンスが落ちてしまう。
さすがに、もうこれらの高速モードが十分に市場に行き渡り、技術的にも成熟してきたので、そろそろこのモードとの互換性を必須から外さないかという議論だ。
先週のIEEE802.11では、正式にこのモードの利用を減らす提言に対して、市場性の面からの意見をWi-Fi Allianceに問う文書が採択された。加えて、セキュリティ面でもWEPの使用をなくすなど、過去との互換性を聖域視せずに、見直すという活動が今年から本格化する。
こちらは、いつまでも元カノとの思い出を大事にしてきた無線LAN男が、過去を吹っ切れるかどうかみたいな話だ。