夕方、旧知で某大手メーカーの専務執行役員である方と打ち合わせ。彼とは、もう四半世紀以上のお付き合いで、昔は現場で半田付けしながら、試作開発のデバッグをしたこともある。
いまは、すっかり経営管理側の立場なのだが、技術に対する考え方というかスタンスは変わらないものだ。僕は、彼の所属していた事業部門の技術者の人達とは、実にたくさんの仕事をしたので、彼の同僚も沢山知っている。さすがに、一部上場大手で技術屋も沢山いるから、同じような仕事をしても、その個性は随分と異なる。
もう、当時の彼の同僚は、皆退職しているのだが、一番の上級職になり現在も務めているのは、彼の仕事に対する真摯な姿勢の賜物なんだなぁと今日も再認識した。
当たり前といえば、当たり前なんだが、やはり「技術に対して嘘をつかない」ということが、多分技術屋にとって一番大事なんだなと思うのだ。「技術に対して嘘をつかない」というのは、コストが上がるからとか納期がかかるからとか、技術以外の理由を掲げて何かを決めたり、何かの言い訳をしたりが、最初に来る事だ。まず、技術的に正しいのか正しくないのか、なすべき事なのか、なさなくて良い事なのかを整理し、そのうえで比較評価の項目として、コストやスケジュールという要素をいれて、総合判断をする人は、技術者として評価できる。
今回は、これからの仕事の方向性の話しだったのだが、よくあるのはすでに取り組んでいる仕事で、なにか問題が生じた時に、こういう判断をせず、いきなりに言い訳として技術以外のことを並べ立てる輩も多い。「そんなことしたら価格があいません」とか「やればできるけど、納期が間にあいません」的な事を、技術論以前に持ち出してくる人には、うんざりするわけだ。
たまたま、いま関係してる組み込み系では、元部下の人に手伝ってもらったのだが、見つかった不具合に対して、きちんとあるべき姿を論じて、なすべき事が提案された。彼も、僕が知る「技術に対して嘘をつかない」優秀な技術屋だ。
面白いのは、こういうタイプの人は、技術論ではなかなか強いキャラだけど、それ以外では比較的寡黙で、所謂弁が立つ系ではなかったりする。ネットの社会では、オピニオンリーダー的なエンジニアが沢山いるけど、以外と弁が先でも技術論に真摯でない人もいる。そういうキャラの人は、いざコードを書いたらこんなこともチェックしてないのみたいな不具合があったり、モノを作ったら致命的な欠陥があったりしても、それを弁でカバーしたりするので、中期的には綻びが露呈する。
というわけで、最後に生き残るのは弁がたつオピニオンリーダーではなくて「技術に対して嘘をつかない」人なんだなと感じた。
ぼくも、口を慎んで生きていこう.....って、できるかな...