参加しているIEEE802.11 Interim会合のClosing Plenaryで、元同僚と共著提案したBSC(Broadcast Service)-SG(Study Group)設置の動議が可決された。これを受けて、次回のIEEE802EC(Executive Committee)に上程され可決されれば、三月から新しいSGの活動が開始される。
このBSCは、無線LANを使って放送型の電波利用をするための規格の策定を目指す。いままでの無線LANは、子局と基地局の間が双方向通信をしており、まず接続のための相互認証をし、その後のデータ通信も、送受信を相互に行う方式だ。
電波の利点の一つは、一つの局が発信した電波を複数の局が同時に受信できる点で、この性質を利用しているのがTVやラジオなどの放送だ。無線LANの端末も、実は基地局が発するビーコンという信号は、放送型で基地局が一方的に送信し、多くの端末がこれを受信し、どんな基地局が近くにあるかを検出する。そして、検出したあとは、特定の基地局と端末の間で、相互の認証をしたり、鍵交換をして、基本的には一対一の通信を行っている。
ところが、たとえばサイネージから発信される広告や映像の配信などで、配信側が不特定多数の端末に情報を提供したいケースでは、必ずしも誰が受信しているかという端末の認証を必要としない利用形態も多い。ただし、端末からすると、未確認な基地局からの配信は受けたくないので、基地局に対しては一定の認証が必要になる。このような、片方向の認証で使うパターンがあってもいいのだが、いままでの無線LAN規格では、そのような形態はなかった。
そこで、今回の提案は、基地局側が不特定多数が受信できる形で情報を発信し、端末側は基地局の識別ができる片方向認証とすることで、電波の利用効率も大きく改善される放送型利用をサポートしようというものだ。
現在の無線LANでは、例えば駅の案内やサイネージ連動の情報などを受け取るのには、何からの接続行為をした上で、WEBブラウザを開くなどの手間が必要だったが、この方式ではラジオやテレビのように端末は、チャンネルを選ぶだけで、配信されるコンテンツが楽しめるようになる。
今回は、SGの設置が承認されたので、まずはPAR&CSDという、標準規格を作らせてくださいという提案書を作成する作業が始まることになる。そこで、僕がTGaiで行なってきたような標準化のオフィサーに、元同僚に入ってもらうことで、次の世代への継続的な取り組みを立ち上げるのが、僕の狙いだ。今回、SGの設置が承認されたので、まずはその第一歩が動き出したということになる。
無事に動議も通ったので、昼はコスタメサの老舗のKotoレストランでお寿司を食べて、LAX経由でサンノゼにもどり、夜は知人らと会食。よいIEEE802の1週間になったことを噛み締めている。