一週間の出張が終わり、ワシントンDCから成田に向けて、これから帰国の途につく。
今回の出張の最大の目的は、IEEE802.11WGで、私たちの提案する方式を標準化するためのStudy Groupの設置を認めてもらうことだった。 既に、1月の会合で今回の会合の最終日のPlenaryでプレゼンをする事はOKをもらっていたのだが、実際にプレゼンの後に動議を出すかは、ぎりぎりまで悩んでいた。 この会合では、動議は常に75%の賛成をとらないとパスしないので,果たして75%穫れるのかというのが、一番の不安だった。 特に、金曜日のPlenaryで、しかもOrlandなので、かなり参加者は減ってしまう。 実際、同時に行われている802.16とか15とかは、木曜日までで終了なので、金曜日まで残るのはコアな11な人だけで、日本人はほとんど残っていない。 つまり、日本人だからという理由で、賛成票を投じてくれる人は、とても少ない。
今回の提案は、もう1年くらい前からWNG-SCという独立委員会でプレゼンを続けて来たもので、このコミュニティでの興味の範囲や参加者の関心どころ、共通なキーワードみたないものが少しずつ判って来て、ブラッシュアップされ、今日にいたった。 とくに、昨年の秋に、大きな方針転換をしてからは、参加者からの反応も代わり、そのなかで参加者の琴線に触れる部分が見つかったのが大きく、それをきっかけに、無線LANチップの大手ベンダーが関心をしてくれ、以前から同じ方向を向いていたドイツの研究者とともに、積極的にプレゼンの内容にアイデアをだしてくれた。 実際、こちらに月曜日に来た時点からもプレゼン資料は修正を繰り替えし、最終的にはとてもシンプルで判りやすいものに変身した。
そして、なによりも嬉しかったのは、この会合で何度か顔を合わせている802.11コアな人達が、投票前に賛成意見を述べてくれたり、動議のSeconderになってくれたことだ。 彼らの多くは、コンサルタントとかで、普通は企業からのスポンサードを受けていて、その看板で活動するのだけど、ルール上は個人に投票権があるので、個々の判断は個々人の裁量によるのだろう。 今回は、僕の会社が彼らを雇用しているわけでも、何らかの便宜を計っているわけではなく、純粋に提案内容がIEEE802.11の解決すべき課題と認識してくれたことによると思う。
投票が終了し、動議がパスして皆がCongratulationと祝福してくれた時は、アメリカの懐の深さを見た気がした。 10年くらい前に、JETRO主催の日米交流シンポジウムで会社のプレゼンをした時も、ハイタッチして祝福してくれたビデオ撮影クルーとかがいたことを思い出した。
もちろん、中にはドロドロの政治的背景が渦巻くものも多いのだけど、きちんとしたルールが存在し、そのルールの基では、オープンな議論とシステムが運営されていることが、アメリカの文化なのだと再認識させられた。