昨日、経済誌のHPや夕刊にある研究機関が開発した通信システムのニュースが乗っていた。 あたかも、イノベーションのような書きぶりだったけど、ニュースの中身からは既出の技術や研究との差異がわからなかった。 もしかしたら、詳細を聞いたらとてつもなく革新的な内容がある可能性はゼロではないかもしれないが、少なくともリリース、記事の内容からは読み取れないので、まずそんなことはないだろう。
民間の企業が、既に周知されているような技術を採用しても、その製品化や実用化、あるいは低価格化や小型化などに従来の技術を凌駕するものが含まれている場合に、それなりにキャッチーな発表をすることはままあるし、理解できる。
しかし、研究所レベル、まして公的なところが、あまりにコスメティックな発表をするのはいかがなものだろうか。 過去の研究や技術も、本当にサブマリン特許のように表にでていかなったものならば、知らなかったということもあるだろうけど、かるくネットで調べれば判る程度に露出している類似先行がある場合に、そんな言い訳は効かない。
昔、モバイルIPの実験成果を発表したら、その数ヶ月後に某大手企業が限りなくそっくりな成果発表をしたことがあった。 その時も、技術の根本的な差異ではなく、対象車両の時速を強調するような発表だった。 後日、この発表をした研究部門の人とお会いしたら、とても恥ずかしそうに言い訳をしていたことがある。
組織やプロジェクトでは、それに関わる人間が、その革新性などに疑問を抱いてる場合でも、話題性や成果の宣伝を優先せざるを得ない事情が発生することはあるかもしれない。 しかし、これは本当のところを一番知っている現場の人間に、その後ずっと後ろめたさのようなものを抱え込ませることになる。 また、こういう事情が優先するような事を続けて行くと、やがて捏造論文のようなものが生まれてくる土壌になる事が危惧される。 さらには、メディアがいたずらに提灯記事を書いて、こうい風潮の片棒を担ぐのも問題だろう。
今回のニュースを見ていると、日本の独創力というのは、本当に失われつつ有るんだなと感じてしまう。