先日のエントリーにも少し書いたけど、今回のIEEE 802.11TGaiの会合は、僕の想定以上の進捗があった。 これは、日曜日の夜にパンダエクスプレスでもらったフォーチューンクッキーに、"People in your background will be more cooperative than usual." とあったのが、まさに当たった感じだ。
このTGaiは、5月の選挙でチェアに再任したあと、7月の会合では進捗が遅いのでないかとプレッシャーをかけられて、リーダーシップにたいする批判的な噂を流されたりした。 7月の会合では、逆にこのプレッシャーをメンバーに共有することで、ワンステップ進めることが出来たのだが、今回もスタートから舞台裏は賑やかだった。
最初のジャブは、某大手半導体メーカーが、合意したアウトラインの拡張を伴う提案をしてきたことで、WGのバイスチェアが「アウトラインって合意済みじゃないのか?」と一週間前に突っ込んで来た。 でも、その彼は、この提案の共同著作者だったりして、「お前がそれを言うのかよ」 という感じで、いささか混乱させられた。 これはリトマス試験みたいなもので、チェアとして毅然とした態度で返信し、時間のアサインも強い姿勢で行ったことで、すんなりと片付いたのだが、チェアの決断力とか指導力を試験されたようだ。
そして、今週の会合の頭では、グループ立ち上げから協力してくれていた超ベテランのテクニカルエディタが、会社の異動にともない参加できなくなるとの報告があり、急遽新しいテクニカルエディタを選任する必要が発生した。 このポジションは、基本的にチェアによる任命なのだが、複数名が名乗りをあげたために、メンバーが合意できる選任が求められた。 これも、チェアの裁量が計られるので、かなり頭が痛かった。
僕は、最終的には自分が判断すれば良いので、なるべく個別の評価は口には出さず、バイスチェアやベテランのアクティブなメンバーの相互協議を自由にさせ、具体的な姿勢は敢えて示さなかった。 これが功を奏して、結果的には、僕の期待していた方向で暗黙の合意ができて、最終的な決断を示しても異論や疑義は生じなかった。
よく薩摩型のリーダーシップ論とかで、リーダーの茫洋さが重要だなんて話は聞くけど、まさにその意味を知るには、今回の一連のマネージメントは良い機会だった。 長年、ベンチャー企業も経営してきたし、合併で上場企業の経営にも関わって来たけど、日本の企業は残念ながらどれも茫洋さでは回らない属人的な統治が主流で、リーダーシップといってもかなり限定されていた。 これに対して、IEEE のように個々の些末な利害は異なるものの、大きな市場利益のために、異なる組織、国、文化の人達を大局的な共通利益に導くことは、本当の意味でのリーダーシップの勉強になる。