今回のIEEE802 Plenaryでは、少し802.19Coexisting という異種システム間の電波共有に関するWGもウォッチしている。また、次世代無線LANであるIEEE802.11axもいよいよ最後の詰めになって、6GHz帯域での共有についての調整が少し難航していたりする。
そんな11axの状況にも関わらず、今回はEHT(Extremely High Throughput)Study Groupという11axの次の世代の無線LAN規格について、本格的に仕様策定をするTaskGroupを組成するためのPARという文章の承認について動議採決が行われた。
基本的には、大きな反対もなくてシャンシャンだったのだが、僕はEHTの目指す性能に対する実現性にいささか疑義があるとともに、11axで問題となっている6GHzの共有もすっきりしない上に、自分自身が実際のSGの活動を十分にフォローできていなかったこともあり、棄権を投じた。
投票は、起立によるStanding Voteなので、ほくが棄権を投じたことは、参加者からは当然わかる。しかも、この投票での棄権票は限りなく少なかったので自明だ。
というわけで、この投票が行われたあとのコーヒーブレイクで、ベテラン参加者の一人に声をかけられた。彼は、レギュラトリー系のチェアもしているので、電波行政にもとても詳しい。そんなわけで、僕が棄権を投じた理由を説明したら、6GHzの共有について、とても興味深い情報を教えてくれた。
産業界の大手は、みんなNDAを結んでるのだけど、彼や僕のように大手企業のプロパーでない独立系のエキスパートだと、知らない情報も多いけど、時にだからこそ知ってしまう情報もある。そして、独立系なエキスパートは、NDAの拘束の外側にいたりする。そんな立場同士な彼から、今日聞いた情報は、なるほどそうなのね的に納得する材料だった。
彼も僕もIEEE802.11 ができる前から無線の世界にいて、無線LANの黎明期を知っているし、いま6GHzの共用で問題になっているUWBという技術にも、初期のリーディングカンパニーだった米国ベンチャーとも繋がりがあったので、ついついこういう話になると年寄り同士で昔話になってしまったけど、まあそれはそれで面白かった。
そんなわけで、しっかりと意思表示を示すAbstain (棄権)というのも、こんな情報を得ることに繋がるので、大事だなと再認識した。