池田信夫さんとは、彼が経済産業研究所にいた頃に、僕がやっていた無線LANの事業モデルに興味をもってもらったことがきっかけで、いろいろと議論させてもらっている。 ひたすら回路図やソースコードと睨めっこして、半田付けをしてきた僕には、経済学や経営学はとても刺激的だ。 最近は、MOTとかいう技術経営論もあるが、いづれにしても実践主義の僕にとって、自分の実践したことをそれとまったく関係ないところで書かれたり研究された学問に照らしてみて検証するのはなかなか楽しい。
池田さんのBlogにあるロングテールだが、僕はかねてからインターネットでビジネスになるキーは、"あなただけよ"物だと言ってきた。 ブロードバンド環境の整うよな国や地域では、ロジスティックは大きく発展しているわけで、インターネットを使って地方の特産物を販売なんていうことをしても、既存ロジスティックに適わない。 実際に東京では、日本中、世界中の名産品がいとも簡単に手に入る。 そういう意味で、マスマーケットなビジネスをインターネットでというのは、なかなか厳しい。 一方、個々の消費者に特化したきめ細かいサービスを行うためには、個々の消費者とダイレクトにコミュニケーションができる仕組みが必要で、インターネットは効率的にこういうCRMが構築できる。 となると、そのうえで提供するものは、顧客に特化したカスタマイズしたサービスとなる。 カスタマイズ=あなただけよ の最たるものは、ギャンブル、証券、アダルトだろう。 いづれも、他人と共有したり他人に知らしめるものじゃない。 そんなわけで、このロングテールという経済学的な解析とは別に、実態としてもカスタマイズ=ニッチがインターネットに向いてることを感じる。 カスタマイズを認めるということは、多様性を認めることであり、多様性が美徳なアメリカがインターネットビジネスで先行している理由がわかる。
上記の池田さんやその仲間が、昨年情報通信政策フォーラムというシンクタンクを立ち上げた。 昨年の上期は放送と通信の融合について、下期は電波政策について連続セミナーを開催し、僕もいささかお手伝いをさせていただいた。
このセミナーは、少人数で講師の講演のあとに、結構熱いディスカッションをして、なかなか楽しい。 2月には今年度の集大成で、以下のシンポジウムが開催される。
通信と放送の融合が話題になっている。地上波テレビのデジタル化が進むにつれて、通信網を通じて放送コンテンツを送信することが、計画の補完手段として注目されるようになってきた。一方、通信事業者を中心に、ビデオ映像のオンデマンド配信がビジネスとして動き出している。情報通信系企業と放送系企業の間で買収合戦も起きている。これらさまざまな動きを説明するキーワードが「通信と放送の融合」である。 しかし、この言葉は、語る人によって別の意味で用いられているようだ。それを反映するかのように、「通信と放送の融合」が作り出していくであろう未来の姿も、人によってイメージが異なっている。このシンポジウムは、各界の識者の意見を戦わせることで、「通信と放送の融合」の真の姿を明らかにすることを目的とする。
共催または後援:日本経済新聞社(予定)
場所:日経ホール(定員596名)、入場無料
月日:2006年2月22日(水曜日)
入場希望者は、info@icpf.jpまでお申し込みください。先着順で締め切ります。
12時40分:開場
13時05分:総合司会兼趣旨説明 池田信夫(ICPF事務局長)
13時10分:講演1 松原聡(東洋大学教授、通信・放送の在り方に関する懇談会座長)
13時35分:講演2 林紘一郎(情報セキュリティ大学院大学副学長)「通信と放送の融合と法制度」
14時00分:休憩
モデレータ:山田肇(東洋大学教授)
パネリスト:
鈴木祐司(NHK解説委員 兼 放送文化研究所主任研究員)
関口和一(日本経済新聞社産業部編集委員)
中村伊知哉(スタンフォード日本センター研究所長)
西和彦(尚美学園大学教授)
藤田潔(情報通信総合研究所代表取締役社長)
宮川潤一(ソフトバンクBB常務取締役)
各パネリストの発表(各8分)
討論(各20分ずつ3テーマ程度)
テーマ1:通信と放送の融合は誰のビジネスチャンスか
テーマ2:通信と放送の融合の隘路は何か、どう解決するか
テーマ3:通信と放送の融合と公共性、言論の自由
16時15分:閉会