朝の連ドラは見ていないのだが、話題になっているので、遅ればせながら「ヒゲのウヰスキー誕生す」川又一英著を読んでみた。テレビドラマとはちがって、スコットランドまで取材にいった作者による淡々とした伝記なのだが、事実は小説よりのごとく充分にドラマティックだ。
それにしても、つくづく凄いのは、ウイスキー造りは、蒸留してモルトをつくってから、樽貯蔵で5年以上もの時間がかかる事だ。もちろん、蒸留後も、熟成中も一定の検査により品質の確認をするわけだが、結果として評価されるのは樽出しした後なのだから、もの凄いリクスなわけだ。
しかも、その後のバッティングにより、どうこのモルトが生きてくるかなんていうのは、さらに深い組み合わせをしないと判らないわけで、まさに先行投資だ。
僕も、味噌作りをはじめて10年になり、その量も8樽=480kgになるけど、これも仕込み後半年たってからの天地返しと、蔵出しの時までは、ひたすら醸造されるのを待つしかない。だから、毎年作っていても、蔵出しの時に樽の蓋を開ける瞬間は、とても緊張する。
野菜つくりもそうだけど、どんなに努力しても、どんなに丁寧に仕事をしても、台風や害虫、獣などによる不慮の被害はあり、それなりのリスクはある。しかし、ウイスキーのように樽にいれて、5年というのは、かなり忍耐と信念がないとならない仕事で、それは僕には創造の域を超えるものがある。
これに比べると、ITベンチャーの仕事は、当事者にとっては、なすべき事を信念に基づいて行うもので、果たしてリスクというのものが在るだろうかと思ってしまう。そこに、投資するベンチャーキャピタリストらにとっては、リクスであることだろうけど、それは結局のところ何処までその仕事にコミットするかなわけだ。コミットできない他力本願な仕事、投資だったら、それは怖くてリクスをとれず、安全策優先となるのは当然な気がする。
新しい市場を創出する、なすべき事をする仕事には、リスクをリクスと思わない信念がなくてはならないということを、この先人の記録から再認識させられた。