仕事で関係している山梨県上野原市には、市内最大の住宅造成地であるコモアしおつという住宅団地がある。 ここは、山の上を開発した1200世帯くらいの住宅地で、その街並は住宅会社のコマーシャルにでてくるような瀟洒なものだ。 ここでは、アナログ地上波放送は、共聴方式によって視聴可能となっており、これは共有財として管理組合が管理している。 この管理組合というのは、他の様々な共益部分の維持管理を行なうための組合で、住宅購入時の一時金と毎月の管理費を組合員が支払い、財源としているそうだ。 この地域においても、市の情報基盤整備事業により、各家庭にFTTHが引き込まれ、CATVに加入すれば地上デジタル放送が視聴出来るように整備されていた。 しかし、それにも関わらず管理組合は、一億円近い費用を費やして、アナログ共聴施設のデジタル改修を強行し、必要な諸手続きや再送信同意を取得しないまま地上デジタル放送の再送信(圏内、圏外ともに)を試験放送と称して違法に行なっていた。
とろこが、今日の朝になって、急遽デジタル放送の再送信を違法であるために停止するというチラシが配布され、停止されたそうだ。 彼らは先週、山梨に系列のあるNTVとTBSの圏外波再送信を停止し、来年の1月5日には他の再送信も停止するという事を広報していた。 しかし、それは違法行為をそれまで継続することを公式に表明したものであり、そんなことがまかりとおるのかと疑問に思っていたところだった。
結局のところ、この年末の今になって、全ての地上デジタル放送の再送信を停止したわけだが、それまでの説明で法的に問題ないなどと公言していたことを信じた市民は、年末年始のこの時期にいきなりデジタル停止という状況に陥ってしまったわけだ。
そもそも、すでに市が整備した光があり、有料とはいえ月額1,050で合法なデジタル対応されているにもかかわらず、多額の費用を投じて、二重投資を強引に進めた背景には、極めて政治的な判断があったのではないだろうか? 管理費のように、使途が直接的に判らない共有財は、一部の人の作為により、いとも簡単に無理や無駄な利用がされてしまうというのは、実に怖い話だ。 世帯あたり10万円もあったら、これを地デジ移行のための還付金として、組合員に還付すれば、アンテナを自ら建てる人はその費用に使えたし、CATVに加入する人は、以後の月額利用料に充当しても、5年分くらいにはなるし、新しいTVに買い代える費用に充当したりできたはずだ。 さらには、アナログ停波後は、アナログ共聴施設の維持管理費が不要となり、その分管理費が軽減できる。
結局のところ、こういう基本的な積算評価や合理的な比較考証をせずに、極めて政治的な暴走をし、最後に一般の市民が不利益を被るというのは、本当に情けないし、悲しい事だろう。