メカトロ、バイオ、IT、ICT、エネルギー等々、いろいろと投資対象ドメインを変えては、技術公募、研究助成を繰り返してきた官製リードなトレンドもついに行き詰まったようだ。
ここにきて、国も学会もそろってイノベーションを起こす個人への支援なんて事を言い出した。やれ、変わった人を応援するとか、イノベーションを起こす尖った人を育てるとかがお題目だ。
しかし、はっきりいって、こういう仕組みを作るのも、そこに提案されるアイデアや人材を評価するのも、変わった人でも尖った人でもないだろう。むしろ、真逆の由緒正しき日本式教育やキャリアパスに乗ってきた人達だったりするわけだ。
これって、一昔前に散々地域情報化を推進とかいって、都会人が都会で仕組みや制度をつくって、地域の為というお題目に、自己陶酔していたのと同じ事になるのは目に見えている。
たぶん、今の時点でこういう制度に乗っかれる人って、そこそこに大人なわけで、そこに変人や尖った人がぽっと出てくる訳はない。だいたい、正当な変人や尖った人は、自分が変わっていたり尖っているという自覚が無いんだから、変人さん手を挙げてと言われても、のこのこ出てこない。
むしろ、尖りすぎて変人と、長い間業界や学会で周りからレッテルを張られてきた人を、この機会に野に放すことの方が早いんじゃないだろうか。もし、いやーあの人は危ないとかで、リスクを取れないなら、そこまでの話だ。
また、結局のところいい大人(大学生くらい)になって、変わり者とか尖ってるというレッテルを張られてない人は、いきなり尖ったり、いきなり変人にはならない。まぁ、ごく稀になにかの切っ掛けで、吹っ切れちゃう人はいるけど。キュゥべえだって、良い大人に僕と契約してなんて誘いはしてくれないよ。
だったら、どうやってイノベーションを起こすような、尖った人や変人を育てるんだといったら、もうこれは大人じゃない子供達に自由に遊ばせる環境を徹底して作ることの他に道はないだろう。
中学生や高校生あるいは小学生に、もっと自由闊達に暴れ回れる環境を提供してあげれば、彼らの中の変人や尖った人になる要素が培養され、成人するころには、当人以外の皆が認める変人になってるだろう。そして、それまでの時間は、高校生一年生だとしたら、たかだか5年なわけだ。いまから、いい大人に投資して、5年くらいで何かが起こる確立より、同じ5年後ならこっちのほうが期待できるはずだ。
こういうのを、僕はいつもお釈迦様の掌(たなごころ)が大事だと表現している。社会のエリートや成功した先人達は、もっと鷹揚に構えて、慈悲の心をもって、その掌を差し出せば良いのだ。
しかも、その上で自由に遊びまわってる本人達には、それが手のひらだとは気がつかないようにすることが大事だ。そうすると、やがて放っておいても、その手のひらに気がつく、あるいはそこからはみ出してこぼれ落ちる豪快な変人や尖った人が出てくるはずだ。
こういう、顔の見えない支援を若い人にやるくらいの度量が、官僚や学会の重鎮の方々にあるのかが、これからの見所だろうな