ホルモン療法と放射線治療という治療方針の説明も十分に合理的で納得がいくものだった。それでも、長年にわたりほとんど医者いらずだった僕にとって、ステージ4の末期癌という言葉が、どうにもこうにも重く響いていた。
基本的には、食事制限もなにもなく、普通に仕事も運動もできる。ホルモン投与により、女性の更年期障害のような副作用が出ると言われていたけど、投薬開始から2ヶ月程度の時点では、自覚できる副作用は起きていなかった。それでも、一月の検診では、PSAがまだまだ386というとんでもない値で、このまま本当にPSAが下がるのか、ホルモンは果たして効くのかという不安は拭えなかった。
そんななか、ちょうど歯の掃除に歯医者さんに行くタイミングがあった。実は、僕の歯を治療してくれている先生は、骨盤矯正の施術で有名で、多くの人が診療を受けていて、癌患者もよく診察を受けている。そこで、歯の診察にいった時に、骨盤矯正を施術をしてもらい、話を聞いた。骨盤の歪みがリンパの流れや血行を悪くし、万病のもとになるというのは、それ自体はなんとなくありうるなと思う理屈だ。
でも、だからといって行なっているホルモン療法や予定している放射線治療をやめて切り替えるなんていう気には慣れない。でも、いろいろな代替医療も、まったく気にしないという精神状態ではなかった。
兎にも角にも、ホルモン療法で、PSAがしっかり下がってくれることが第一なわけだけど、それは血液検査で判るPSAマーカーでしか判断出来ない。このため、診察の時にPSAの値がどうなっているのかは、とても気になってしまい、診察結果を聞くのが怖かった。
ホルモン療法をはじめて、3ヶ月が経過した3月の検診で、PSAがやっと一桁になって、ホルモン療法の効果が実感できるようになった。この頃になると、万が一のことを考えるより、どう生き抜くかを考えれるようになった。