総務省で審議されている広帯域移動無線アクセスシステムの技術検討作業版の会合を傍聴した。 一昨年、自らも参加したワイヤレスブロードバンド推進研究会の報告を受けて、2.5GHz帯での技術条件を審議している。 先の研究会では、BWA(広帯域無線アクセス)となっていたものが、いつのまにやら移動の文字がはいり、すっかり移動サービスを前提としてた技術検討一辺倒となっていたのには、驚愕した。 移動サービスなので、使おうと思えば固定にも使えるし、最初から高出力の固定通信に割り当てたら、移動通信が使えなくなると、構成員のSさんが言っていたが、それは、あまりにもステレオタイプだ。 移動通信として、全国サービスに免許を与え、結果として誰もサービスしないエリアが出来たら、その周波数は死んでしまう。 そういう場合は、固定通信にも利用を許可する余地を残すべきだ。 原則、電波資源は移動体利用として、固定系には光などを使うべきだというのは、僕も賛成だが、メーカーやチップベンダー主導の、我田引水的な活動には、本当にうんざりだ。 昨日の作業班も、二社が執拗に技術の優位性をけん制しあうやりとりが続いた。 Wi−Maxも、世界のトレンドだ、世界中で何百社が参加しているとしきりにアピールしているが、当初アピールしていた長距離伝搬については、いつのまにか2kmセルくらいの現実路線の話となっているし、速度もそこそこになっている。 韓国でもWi−Broは実際に当初の予定ほど、置局が進んでいない。 こういう、仔細な技術基準を先に決め、サービスが後からくるような、電波資源の割り当てを、またここでしてしまうのは、本当に残念だ。 いま、この周波数との共用条件で一番影響を受けるモバイル放送の事業だって、いったいどれだけ普及しているのだろか? 少なくとも、私の周りで個人の利用者を見たことが無い。 かつて、ワイヤレスインターネットサービスの事業者で、一緒に仕事をしたことのある、ADSLキャリアのCTOのOさんも構成員で、技術基準をきめて、あとはやりたい人が選べば良いと言っていたが、あまりに選択子がない技術基準を決めていることを判っていないのかもしれない。 帯域内のスペクトラムマスクと帯域外輻射、物理レベルでの異システム間の共用システムまでを規定することで、十分なはずだ。
政府は、一方でUJapanという政策で、ブロードハンド未解消地域をなくす事を重要な課題としている。 残された300万世帯のエリアでは、未だFWAが有効な点もあるし、実際に欧米ではIEEE802.16a/dのFWAをルーラルで有効に利用している。 もちろん、過渡期の技術導入ではあるだろが、確実に社会基盤として人々の生活を支えている。 過去10年、海外からの謳い文句に乗せられて導入した無線の失敗事例を数多く見てきたが、またひとつその事例が増えるようなことはあって欲しくない。 作業班の最後に、総務省の担当官からは、FWAの検討は、今回時間がなく十分に出来ていないので、これは一部答申となるという答弁があった。 一部答申が先行し、残る課題の導入を妨げるようなことになるのだろうか。 貴重な電波資源を有効に利用するために、今後は事業政策が大きな鍵になるかもしれない。 この規格で移動体通信をするという業者には、きちんと展開することを義務付け、厳しい審査をしてほしいものだ。 少なくとも、周波数だけを確保して、既得権益化するようなことにはなってほしくない。 ちょうど、電波利用状況の調査の方法も改定される、事後監視も強化されるので、この辺りの官庁としての指導力に期待したい。