今日のITRC研究会では、PIOT分科会で情報流通を取り巻く動きについて、そのあとの企画セッションではIEEE802.11ai標準化の話しをさせてもらった。
IEEE802.11aiは、もともとITRCのコアなメンバーとスタートとしたMISで開発したプロトコルが元だ。まだ、いまのようにWi-Fiが街中で使える前に、街中インターネットを掲げて、インターネットにモビリティを与えようという発想からスタートしたものだった。
そして、当時はパソコンを対象として、せいぜいノマデイックな利用までしか考慮していなかったIEEE802.11を、モバイルコミュニケーションでも使えるようにという転換をするターニングポイントだった。
昨年の12月に標準化が終了し、メジャーチップベンダーやセットメーカによる実装フェーズに入ったことから、今日は標準化活動を振り返った話をして、若い人を、国際標準化という領域へ誘うことができればと話しをした。
そんなわけで、この機会に少しだけ11aiの活動をデータ的に整理してみたので、ここにも貼っておこうと思う。
まず、この標準化でどのくらいの会議をしたかというと、下の図のように7年間で、電話会議、本会議、アドホック会議合わせて、累計で427回の会議をしたわけだ。実会議は2時間、電話会議は1時間が単位なので、ざくっと平均1.5時間とすると、640時間くらいになる。これなら、どこぞの政党でも、審議が十分に尽くされていないなんてことは言えないだろう。
次の地図は、この間に開催された会議の開催場所なのだが、世界40箇所くらいで、複数回開催された場所もあるけど、まぁよく飛び回ったものだ。
その下の棒グラフは、これらの会議に向けて提出された資料の数と著作者の数で、同じドキュメントが複数修正して提出されるためUploadが提出された数で、Submissionがオリジナルの数を示している。これをみると、初期の一番提案の多い時期には、年間800くらいの寄与文章が70人くらいの寄与者(複数著者も一人としてカウント)から提出されたことになる。
このように提出された寄与文書をもとに、議論を重ねて、執筆された標準仕様は、Draft1.0から逐次書面投票に付されて、そこで提出されたコメントに応じた改定を繰り返した。そして、十分な改定がなされた時点でワーキンググループからスポンサーというより広い範囲での書面投票に移行し、同様のコメント受付と改定を繰り返した。最初のDraft1.0では、1380のコメントを受けて、74%の賛成だった。承認には75%以上の賛成が必要なので、このDraft1.0は、承認されなかったわけだ。つぎの、Draft2.0では無事に85%の賛成で承認されたが、コメントがたくさんあって、それに対する改定を進め、2013年9月のDraft 1.0から3年かけて、2016年9月のDraft 11.0でついに最終承認となった。
このように長い時間を要したものの、自分たちの提案した技術が、世界中のスマホや無線LANに搭載されるということは、やはり感慨深いものがある。
というわけで、以下の8つの質問のうち、YESが三つ以上のある若者は、いろいろな支援策も検討されているで、ぜひ国際標準化という仕事に取り組んでほしい。
1.英語のスキルを、磨きたい。
2.ハワイの巨大リゾートホテルには、行ってみたい。
3.アメリカンなステーキを、たまに食べたくなる。
4.メジャーリーグを生で見たい。
5.本場の、オペラやコンサートに行って見たい。
6.マイルやホテルのリワードブログラムを、貯めている。
7.レアなスコッチとかに興味がある。
8.ゲーム理論とか、戦略ゲームとかが好きだ。
研究会のあとは、MISの頃から一緒に取り組んで来たITRCの仲間と、MISでの規格化などを推進してくれたモバイルブロードバンド協会の皆様が集まって、標準化採択のお祝いの会を開催してくれた。モバイルブロードバンド協会の前理事長のG先生や総務省の課長さんもご多忙のなか参加いただき、とても楽しい会だった。
標準化は、時間もかかるけど、一人では何もできない。実際に、こういう支えてくれた皆様がいて、はじめて結果がだせる仕事なのだ。というわけで、あらためて多くの人に感謝の気持ちを伝えるとともに、後進のために記憶を少しでも記録にしておく。