ものすごく久しぶりに、APPLIC(一般財団法人 全国地域情報化推進協会)の会合に参加。今日は、自治体Wi-Fi普及推進WGという部会で、無線LANの自治体による整備に関して、懸念や在り方について提言をお話しした。
ものすごく簡単に言うと、観光案内のように自治体が自らが主体となって情報提供をしたり、利用者とコミュケーションするサービスを行うのと、いわゆるインターネットへのアクセスを提供することの、根本的な違いが、なかなか認識されにくいのが現状の課題のようだ。
ここで、前者は、監督官庁である総務省においては、地域情報化は情報流通局のお仕事範囲となる。この場合には、サービス提供者である自治体と、その利用者という二者に主な利害関係は限定され、そこに多少の齟齬があって問題が発生しても、その派生する範囲は限定される。地域振興という錦の御旗で、公衆無線LANを産めや増やせやとすることも、観光案内が便利になるなど、この範囲ではデメリットやリスクよりメリットが大きいだろう。
ところが、後者のインターネットへのアクセスを提供するというのは、根本的に自治体が通信の仲介をする通信事業と同等のサービスをすることに他ならないわけだ。そこで、この部分は総務省では、総合通信基盤局の管掌範囲となる。ここで、忘れてはならないのが、インターネットへのアクセスを提供するということは、それによって生じる問題は、自治体と利用者の二者に閉じず、広くインターネットに接続された様々なサービスにも影響を与えるということだ。となると、自治体であれ、通信事業者相応の管理、提供責任などを負う必要があるはずだ。ところが、どうも無線LANはタダで使えて自営利用でもあるんだから、そんな煩いことは言わないで良いと安易に捉えられているのかもしれない。
実際に、某自治体では、技適の無い端末の使用について、今までに問題が起きたり、監督官庁から指摘された事がないから、とくに注意しないみたいな発言をした職員が居たというニュースもあったくらいだ。
一方で、利用者目線からは、無線LANとして提供されるサービスが、インターネットに出て行けないとしたら、不便で存在意味がないじゃないかとなるが、これも当然の意見だ。
問題は、通信事業相当のコスト負担も管理負担もしないで、アクセスを提供する事であり、自治体に身の丈を超えたサービスを十把一からげに提供することを推奨している点だろう。
自治体が公衆無線LANによって、市民や観光客に利便性を提供することは良いことなので、それに補助金を出すことは多くの賛同を得るだろう。しかし、そこでインターネットアクセスを提供するなら、それは自治体ではなく通信事業者に設備を解放することを義務化して、通信事業者にこれを利用してアクセスサービスを提供してもらう方式を推奨するほうが、適切ではないだろうか? 当然設備投資分がないので、料金体系をどうするのか、無料で良いのかなどは、検討課題ではあるが、それは決め事の範囲で済む。
さて、こういう発想に行かない理由は、このスキームの実現には、情報流通局と総合通信基盤局が連携して、共通の課題認識をし、制度設計に反映しなくてはならないからかもしれない。さらには、日々進化する技術的な進化を反映した、中長期的な整備計画となると、技術政策に関係するので、情報通信国際戦略局も関係してくる。つまりは、行政の縦割りを超えるリーダーシップが必要な状況が、今日の公衆無線LANの普及政策にはあるということだ。