IEEEにおける議事運営は、Robert's rule of orderによって行われている。IEEE-SA配下の数多くあるWGの中でも、とくに802.11は参加者が多く投票権者が370人くらいいるので、その議事運営については、かなり厳格に行われる。
ここでは、基本的な意思決定は、評決により行われ、技術的なものは75%,その他は50%の賛同により可決される。これは、逆にいえば技術的なものは、25%=1/4の反対があれば、否決されてしまう。
今週のTGaiでは、技術的な修正要求に対する二つの異なる提案が、ともに75%の賛同を確保できないdeadlock状態に陥った。そこで、この結果、修正要求を却下するという手続に関する動議が示された。この場合、この動議は技術的なものではないため、50%の賛同で可決される。
実際に、deadlockになった二つの事案のうち、一つはこの方法により現状の規格に対する修正要求が却下された。ところが、もう一つの事案については、この手続に関する動議にたいして、棚上げをする動議(Move to Table)が出され可決された。このため、この事案については、会期中(今日が最終日)に審議再開しない場合には、自動的に無効となる。この結果、当該の修正要求に対する解答(却下も含めて) が出来なくなり、次のドラフトが完成しないことになった。
ここで、この二つの提案が本当に技術的に排他的なもので、究極の選択を強いられているかというと、そうではなく、極めて参加企業の戦略的な戦いだったりする。 そこで、普段議論に参加していないような人を、投票のときだけ呼び出すことをする組織が多い。このような行為は、投票権が参加個人に付与される仕組みでも、各人は組織に属しているために必然的発生する。
Robert's Rule of Orderと802の運営規定によれば、特定の組織などが独占的な影響による多数の議決票を行使する場合、チェアはそれらを一票とみなすことができるとある。しかし、実際には、なにを基準に独占かというのは、明確な判定ができないので、このようなチェアの裁量は取りにくい。
今回も、上記のdeadlockに至った経緯では、明らかにこのような組織票が動員されており、このことが問題としてiEEE-SAに提訴それ、チェアミーティングでも議題となった。
そこで、SAのスタッフからは、各会議の冒頭でチェアが参加者に示すガイドラインに、他の参加者に特定の投票を要求するような行為の禁止を明確に示すことの提案があった。
日本では、「議事運営につてもう少し勉強してほしい」と、偉い人が発言したらしいけど、こういう議事運営をぜひ技術者や官僚の皆さんにも学んでほしいものだ。