参加していたIEEE802.11の会議は、基本的にインディビジュアルといって、参加者個々人が投票権を持つ標準化策定方式により運営されている。IEEE-SAには、これ以外にエンティティモデルといって、企業や組織に対して投票権が付与される方式により標準化を行うワーキンググループもある。
IEEE802.11WGは、参加者も多くその成果の経済的インパクトも大きいことから、標準化のエキスパートと言われる多くの人たちが、企業との契約により参加している。
いわば、この人たちは、ピンで仕事をするプロであり、皆それなりに標準化の技術にもポリシーにも一過言あるし、そういうことを発信することで周りからも一目置かれている。ちょっと違う言い方をすれば、少し面倒くさい輩だったりする。
IEEE802.11では、チェアやバイスチェアなどのリーダーシップは、2年の任期で改選がある。多くの場合、良きプロフェッショナルな人は、一つのクライアントとかなり長く継続的に仕事をしており、サポートもあるので、改選の時に変わることは少ない。ところが、なかには一つのクライアントと長続きせず、いつも次のクライアントを探してるようなエキスパートもいる。
こういう人は、観察しているといろいろと理屈は言うし、それなりに実務もするのだけど、ちょっと自分に不都合のあることになると、黙りこんだり、レスポンスがいきなり悪くなったりするケースが多い。そのくせ、一人よがりだから、ああ言えばこう言うという感じで、自らを正当化する弁だけ達者だったりする。
ちょうど、いま日本では某知事の釈明会見が話題になってるけど、あれなどは見るかにみっともなく自己正当化に走ってるパターンに見える。まさに、あれと同じで、結局のところなにか問題かあった時に、説明責任を全うできないエキスパートは、そのまま仕事の継続性に疑義を生じるのだろう。
これは、標準化に限らず仕事は、皆そうなのかもしれない。僕がいままでビジネスでおつきあいしてきた人で、都合が悪いと電話に出なかったり、メールの返事をせず、クレームされると相手が悪いから返事はしないなんていうパターンの人は、だいたい顧客とトラブルを起こして、仕事が続かないようで、数年前にまさにこの典型な人のトラブルにまきこまれた。
幸い、いまのタスクグループのオフィサーは、責任感が強く、本当によくリプライしてくれるけど、以前に関係したオフィサーは案の定、もうIEEEの標準化では仕事がないようで、顔をみなくなったなと、改選を迎えてしみじみ思った。
僕は、もともと回路やソフトの受託開発をしてきたけど、技術屋もこのことが重要で、奢らずに、逃げずに正面から問題を解決する開発者でいたことで、長ーーーいお取り引きのお客様に支えられたのかと思う。
はっきり言って、面倒くさい、付き合いにくい小うるさい開発者ではあったと自覚してるけど、逃げないしつこさが売りだった。